4/8 ようやく2測点目


↑CTD。主役のCTDセンサー(水温・塩分・溶存酸素・圧力センサー)は真ん中下の方についています。灰色の12Lボトル24本は、様々な深さの海水を採取するためのもの。この他に、流速を超音波で測る測器や細かい流れの乱れを測る測器などがついています。このシステム全体をワイヤーで吊り、海の中に沈めます。


↑研究者居住区の風呂。画面奥が左舷側。ローリング(横揺れ)時はものすごい勢いでお湯が浴槽から溢れだし、壮観です。





165Eまで一気に東に進む予定が、低気圧の影響が強いため、07:30に到着した163Eで急遽海洋観測2測点目を実施。深さ2000mまでのCTD観測、FRRF観測、200mまでのCTD観測を終えたところで風速が15m/sを超え、アウト。XCTD投入とゾンデ放球を行い、離脱しました。夕方164Eまで達したところで最後のXCTD・ゾンデを行い、ヒーブツー(うねりに向かって船を立てて待機する状態)開始。

今朝のCTD観測では時間の節約のため、ワッチ外の人間も加わり、必死で採水。溶存酸素、炭酸系、酸素同位体、塩分、栄養塩、クロロフィルと項目ごとに異なるビンに何本も採水していると、次第に手が痺れてきます。亜熱帯海域では海の深い方から採った水は冷たく、浅いところの水は温かい(そのため、温かいボトルの取り合いに?!)のですが、ここは亜寒帯。海面近くの水も5℃程度で、深さ2000mの2℃の水と大差ありません。

というわけで、観測終了後、昼風呂にザブン。2日に1度の楽しみ。海水ではなく、真水の風呂です。

夜は食堂にて研究者総出で飲み会。教養を高めるために中国語の勉強に勤しむ人たちも。風は23時に22m/sを記録。

4/9 ヒーブツー

うねりが高く、1日ヒーブツー。色々な方向からうねりがやってくるため、最大のうねりの方角に船を立てていても、大きくローリング(横揺れ)します。ローリングの角度が20度を超えると、あちこちの部屋から物の倒れる音、机の上から物の落ちる音が。この状態だと、寝るのも疲れます。

昼間はがらんとしていた研究室も夜になると人が集まりだし、飲み会がスタート。数日前にXCTDで測った水温・塩分断面を見ながら延々と議論が続きました。

4/10 2日ぶりの観測


↑エンジンルーム見学


↑ローリングの角度を測定中


↑8日のCTDで深さ50〜200mから採取した海水を甲板水槽の中で日光に当て、植物プランクトンを培養中(手前)。奥ではゾンデ観測のバルーンにヘリウムガスを注入


↑手際よく採水


↑海水サンプルに薬品を注入し、溶存酸素を固定


↑海水試料からクロロフィルをろ過(名古屋大)


↑植物プランクトンにより作られる硫化ジメチルなどの揮発性有機化合物を抽出(国立環境研究所)


↑炭酸系の測定(気象庁気象研究所)。海水と同時に大気中の濃度も自動測定しており、大気・海洋間のCO2移動量を算出。今いる海域は、海洋による大気中CO2吸収量が世界で最も大きい場所の1つです

風が収まったものの、午前中はうねり高く、ヒーブツー。8-0班はエンジンルーム見学ツアーを行っていました。

午後になり、海況がよくなってきたので、ゾンデ観測から再開。荒天のため外から閉じられていた鉄製の水密扉が開けられ、みんなの居場所である第3研究室に明るさが戻ります。その後さらに海況がよくなり、ようやく航走開始。ヒーブツーの間に移動してしまった分、XCTDを打ちながら北に戻りました。

18時半3つ目の測点(41N、162E)に到着。海底までのCTD、FRRF、200mまでのCTD、そして今航初のMSP(乱流計。細かい流れの乱れを測る)とスムーズに進み、01時半終了。しかし、明日の夜またもや低気圧が今いる場所を直撃するため、南に向かってゾンデを上げながら航走開始です。ああ、もっとも観測がしたい。。。と思いながら飲んでいると、3時過ぎには夜が明けてきました。

ワッチに入っていない化学・生物系の研究者は採水後が本番。第7研究室に所狭しと並べられた装置によって、クロロフィル、揮発性有機化合物、全炭酸・全アルカリ度などが測られていきます。

4/11 ヒーブツー


↑アッパーデッキに並んだ放射計

南に向かって航走。本航海は回航時間が長く、ゾンデ班は「観測でき過ぎ」でヘリウムガスの残量が心配なため、09時で観測中断。何とも贅沢な悩み。15時に38Nまで下がったところでヒーブツー開始。午後は第2回エンジンルーム見学ツアー、サッカー大会(ボール1個を海にレッコ。残り4個)、トランプ大会など。

人が打ち上げるゾンデ観測以外にも、ブリッジ上のアッパーデッキでは気象の自動観測が行われています。短波・長波放射計、シーロメーター(雲底高度計)、パーティクルカウンター(空気中の微細粒子の測定器)、雨量計、水蒸気観測用GPSアンテナなどが稼働中。気象以外にも、船内の研究室において表層流速や昨日紹介した揮発性有機化合物と炭酸系の自動観測が行われています。

観測がなかなかできずにフラストレーションの溜まる航海ですが、研究者は皆明るく、ワイワイとやっています。本航海の特徴は研究者が全体的に若いこと。主席研究員は42歳、レグ1は27名の研究者のうち最年長が45歳トリオ、一番下が7人いる22歳、平均31歳という若さです。

4/12 観測再開


↑XCTD(使い捨て式水温・塩分計)。街中で持っていると逮捕されそうな形です。航走中の船の左舷後方から投入します。


↑XCTDの投入。水温・塩分を測定するプローブからは細かい銅線が伸び、データを船上へ送ります。




↑黄色の丸の位置を北上中です。

うねりが収まり、08時半に北に向かって航走開始。出発点の気温は13℃台で、亜寒帯の気温に慣れた身には非常に暖かく感じます。今日1日はXCTDを緯度10分間隔で打ち、黒潮続流域の細かい海洋前線構造とモード水分布を観測する予定。緯度10分間隔のXCTDは時間にして40分ごとにやってくるので、手持無沙汰だったワッチ班にも活気が戻りました。

明日未明に41N、161Eに到着し、そこから42N、151Eに向かって観測開始。経度1度ごとの測点でCTD・FRRF・乱流計・ゾンデ放球を行い、測点間では経度10分ごとにXCTDを投入する予定です。最初の計画からはだいぶ測線が短くなってしまいましたが、北太平洋で最も深い混合層が形成されるこの海域をこの時期に観測できれば、新たな発見が沢山あるはず。レグ1残りの1週間の好天を祈るのみです。

そんな我々を鼓舞するかのように今日の昼はステーキ! 船では基本的に食欲がない私も、今航初めて完食しました。

4/13 チャンス到来


↑夜のMSP観測(1)


↑夜のMSP観測(2)


↑第7研究室、通称「7研」。左舷側には化学・生物の分析機器が所狭しと並べられ、右舷側には乱流計や流速計、それらのオペレーションシステムが置かれています。右奥が6研、さらにその奥が5研です。


↑6研。栄養塩(植物プランクトンの光合成に必要な、硝酸塩・リン酸塩・ケイ酸塩)の測定が行われています。


↑5研。溶存酸素と塩分の測定が行われています。この実測値を使って、CTDセンサーが測定した値を補正します。


↑3研。CTD、XCTD、ゾンデ観測のオペレーションを行います。お茶部屋、談話室、仮眠室、時には飲み会部屋も兼ねています。化学系の航海ではこの部屋も分析機器で一杯となるらしく、「こんなに空いている3研を見るのは初めて」という声も。




↑ここまでの軌跡

次から次へと襲来する低気圧に悩まされ続けている本航海ですが、待てば海路の日和あり、ようやく2日間ほど穏やかになりそうです。深夜0時過ぎに41N、161Eの測点C004に到着。さっそく、ゾンデ放球→CTD(2000m)→FRRF→CTD(200m)→MSP→ゾンデ放球、と4時間半の間に観測がてきぱきと行われていきます。1度西の次の測点まで3時間半移動する間に、XCTD投入、酸素滴定、次の測点の採水ビン準備など。初乗船の学生さんもあっという間に仕事を覚え、経験者とともにバリバリ働いてくれています。見事なチームワークに支えられ、今日は8時間サイクルで3測点をこなしました。夕方からは本航海で一番の凪となりました。

船の中では後ろほど、また下ほど揺れないため、10ある白鳳丸の研究室のほとんどは後方に設けられています。私たちが通常使うのは第3・5・6・7研究室。特に「3研」は研究者の溜まり場となっており、前方にあり揺れる居室よりも快適で話し相手もいる3研で1日の大半を過ごす人も少なくありません。

4/14 快晴










↑植物プランクトンの光合成の活性度を調べるためのFRRF観測











これまでの悪天候が嘘のような、ベタ凪の快晴となりました。気温は7℃程度ですが、停船観測時に3研の後ろの木甲板に寝転ぶとポカポカと気持ちよく、これまで室内にこもりがちだった研究者も大勢出てきて、おしゃべり、昼寝、日向ぼっこ。天気がいいと皆本当に楽しそうです。17時過ぎにはきれいな日の入りも見られました。

観測は今日も順調。研究者も船側もますます作業に慣れ、いいピッチで観測が進んでいます。今日は158、157、156Eの3点をこなし、北太平洋で最も深い冬季混合層が形成される場所に戻ってきました。大変そうなのは、ワッチに属していない、化学・生物系研究者の人たち。全てのCTD採水に参加した上、研究室で自分の分析も行っているので、ほとんど寝る暇がなさそうです。


(3) 4月15日〜21日