この文書は, 2003年海の日に実施された東京大学海洋研究所一般公開における 海洋大循環分野の出展物 の一部(パネル)を HTML 化したものです. 画像をクリックすると拡大図が表示されます.


私たちが実施している海洋観測

CTD/採水観測

船上からケーブルの通ったワイヤーで Conductivity-Temperature-Depth (略して CTD)を 海底まで下ろし(写真1), その間の水圧・水温・塩分・溶存酸素量を 計測します. 計測値はケーブルを通して船上のPCに転送され, 記録されるので, リアルタイムに確認できます(写真2). 写真1
写真1: CTD
写真2
写真2: 船内研究室にて
写真3
写真3: 昼夜を問わず観測
また, CTDの周囲に取りつけた採水器をPCから操作して, 狙った深さの海水を採取し, 装置を揚収した後船上で試料瓶に取り分けます (写真4). 装置では採取しにくい海表面の海水はバケツで汲んで採取します (写真5). 塩分や溶存酸素量などは船上で分析します(写真6,7).
写真4
写真4: 採水作業
写真6
写真6: 酸素滴定
写真8
写真8: 下から見たCTDシステム
写真5
写真5: バケツ採水
写真7
写真7: 塩分検定

ADCP観測

Acoustic Doppler Current Profiler (略してADCP) は, 海中に音波を発し, 水中の浮遊物からの反射音のドップラーシフトを利用して 幾層もの深さにおける流れの速さを瞬時に計測する装置です. 研究船の底部に搭載されており, 白鳳丸のものは常時表層から1000m付近までの海流を計測しています. また, 私たちはCTDシステムにも吊り下げ式ADCP (Lowered ADCP, 略して LADCP) を搭載しています (写真8の向こう側に見える黄色の装置). CTDとともに上下するLADCPによって海底までの流速を計測できます.

XCTD観測

CTD観測が実施できないときは, eXpendable (使い捨ての意) CTD (略して XCTD) による観測を 行なうことがあります. 投下式のセンサーにより, 海中1000m近くまでの水温と塩分の鉛直分布を観測できます. 写真9
写真9: 航走中の船からプローブを投下
写真10
写真10: データはPCに転送され記録される

係留観測

海中の流れを直接計るため, 流速計を海の中に図1のように係留して観測を行ないます. 1〜2年の間係留しておき, また船で出掛けて回収します. データはそれぞれの流速計の中に電気的に保存されます.

図1
図1: 係留系模式図

写真11
写真11: 白鳳丸では起倒式のAフレームを駆使して 機材を海に繰り出していきます
写真13
写真12: 機材にロープをつなぐ金具をつけて待機. 機材は音響ドップラー式流速計.
写真13
写真13: 投入された信号ブイ
写真14
写真14: 切離装置(手前)とおもり(奥のレール)
回収する時は, 船上から切離装置に音波でコマンドを送って おもりを切り離させます. おもりが切り離れると係留系全体がガラスブイの浮力により浮上します. どこに浮上したかは信号ブイの発する電波で推測されます.

フロート観測

浮力調節により水の中で中立に浮いて漂流する機材(フロート)を 利用して観測を行なうこともあります. そのようなフロートの一つに, 表面と水中を往復しながら漂流し, 水中で計測した水温・水圧データを 人工衛星経由で陸上に転送する Autonomous Lagrangian Circulation Explorer (略してALACE) があります(図2). さらに上昇時に得た水温の連続データを転送するPALACE(Profiling ALACE) もあります.
図2
図2: ALACEの観測サイクル
写真15
写真15: PALACEの放流
図3
図3: 日本海に放流したPALACEの軌跡と水温プロファイル. 005と136は1998年6月に, 204と205は1999年10月に放流しました.
私たちは1998年以来4台のPALACEを日本海に放流して観測してきました (図3). 1台(005)は日本海の北部を大きく反時計回りに回りました. 他の3台は放流後半年から1年で津軽海峡を抜けて太平洋に出, 136と205の2台は2003年5月現在も観測を続けています.

海洋大循環分野 [OCG] 東京大学 大気海洋研究所
海洋物理学部門 海洋大循環分野
web-ocg@aori.u-tokyo.ac.jp