トレックの四日目、小雨の中一日歩いて最寄りの農家の所まで戻ってきた。道を聞こうと思い農家の扉を叩いたところ、二人出てきて「まあ上がれ上がれ」と言う。寒くて仕方なかったので喜んで上がった。道を聞こうと思ったが、彼らは英語があまり喋れず話が通じない。「まあパンとハムでも食べなよ。」と言うので喜んで食った。その後、満腹になったと言うと居間のソファに案内され、眠くなったというとベッドに案内され、なんやかんやで結局二晩お世話になってしまった。
彼らは羊を放牧して暮しており、翌日は彼らに付き合って一日羊追いをした。近所の農家三、四軒(みんな親戚)が集まってモーターボートで出かけ、犬を使って羊を追い込むのだが、結局この日は収穫ゼロであった。途中昼寝をしたり、水面に浮かぶ氷山をライフルで撃って遊んだりとのんびりした狩りだった。時間に急かされていない彼らの生き方がとても羨ましかった。
写真手前の白人の男はデンマークからの移民でこの家に嫁いできたのだが(彼だけが英語が喋れた)残りはみんなイヌイットで、特に右から二番目に写っているこの家の長男はどう見ても日本人で、魚屋のエプロンをして東北弁でも喋らせたら右に出る者はいないのではないかと思われた。(おまけに彼はどこで手に入れたのが、「まるは」の帽子をかぶっていた。)
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