昨日は, 明日は荒れるという船長の予報でブイの設置回収作業を
一日のうちにまとめて行いましたが,
おかげさまで波は穏やかで風も少なくとてもよい日和となりました.
CTD観測がそんな恵まれた天気の中行われていたので,
酸素ビンの採水から滴定まで一連の作業を見学していました.
溶存酸素量は海洋学にとってなくてはならないもので,
海洋物理をやる人間にとっても大変身近なデータですが,
その精度よい収集となると物理の人間には難しいテーマです.
いろいろ工夫はされてより簡単にはなってきていますが,
こうすれば化学分析の素人でも誰でも一定の十分な精度で計れるという
段階までには至っておらず,
測定の仕方には今なお各機関でさまざまなバリエーションがあります.
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これが JAMSTEC で使われている酸素ビンです.
口がラッパ状に開いていて, 蓋は試験管のようなものに
なっています.
左に立ててある試験管のようなものが実は蓋です.
あとで酸素滴定の時に上澄みを捨てる必要がなく,
採水後30分して酸素を固定するとただちに滴定に
取り掛かれるというメリットがあります.
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12本掛けのボトルから各二本ずつ(ダブル)の
酸素ビンの採水を一人で担当していました.
腕にはリストバンドで水温計をつけています.
水温計のセンサーをビンに突っ込んで水温を測定しながら
採水しています.
写真一番手前の人がその水温を野帳に記録していました.
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その水温野帳です.
この水温はビンの中の海水の重さを計算するのに利用します.
ビンの体積はあらかじめ精密に測定されています.
溶存酸素の量を海水に体する体積比で求めるのなら必要が
ありませんが, 重量比で求める場合には海水の重さを求める
ための水温が必要です.
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これが腕につけていた水温計とセンサー.
これが寄りかかっているのは酸素ビン.
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また, 一人は採水したビンを受け取って,
固定液を注入していました.
上の蓋をいったん上げて離すと, その重みで蓋が下がり,
固定液がノズルからゆるゆると出てくるというものです.
手押しだとどうしても人にとって押す強さに癖があって
つい気泡をいれてしまう人もいるようですが,
そのような間違いは起きなさそうです.
固定液は水中の溶存酸素と結合してゲル状に沈殿します.
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酸素滴定のための道具一式です.
沈殿したサンプルは酸で溶かすと黄色くなります.
ここでは硫酸を使っていました(写真中).
それにチオ硫酸(写真右)を入れていくとだんだん透明になっていき,
その終点まで入ったチオ硫酸の量から
酸素量を特定することができます.
この機械はチオ硫酸を少しずつサンプルに注入していくための
機械で, スイスの Metrohm という会社の市販製品です.
透明になったかどうかまず目で判定して
チオ硫酸の流量を減らし,
その後は電極を用いてより細かく終点を判定します.
したがって, サンプルには,
チオ硫酸の注入する管と電極の2本が入っています
(写真左の黄色いラベルのついたビン).
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