この文書は, 1999年海の日にホテル日航東京(お台場)にて開催された 東京大学海洋研究所記念行事における 海洋物理部門の出展物 (ポスター)を HTML 化したものです. 画像をクリックすると拡大図が表示されます.


6. シミュレーションで探る

世界をめぐる深層循環

海の深さは陸の近くを除けば4000m以上あり、その深海の水は主に南極海と北 大西洋北部の二箇所で沈んだ水が世界中に広がったものであることが知られ ています。しかし、深海の観測は困難であり、流れの詳細はよくわかってい ません。深層水がどのように流れているのかを調べるため、世界の海流分布 を高速コンピューターを使ってシミュレーションしてみました。

海を緯度・経度を1/2度、深さ方向に29層に分割し、それぞれの点で水温 や塩分を観測データを元に与えます。そして、力学的なバランスを満足する ように流速を計算します。右図は北太平洋の東西断面を横切る流速の分布で す。海面近くの強い北向きの流れが「黒潮」です。それに比べると、深海の 流れはかなり弱いものです。下図は水深4000mにおける流れの水平分布です。 海嶺などの影響をうけ流れは複雑です。これで、北大西洋で沈んだ水が本当 に遠く北太平洋まで広がるのでしょうか? これを調べるため、海水と一緒 に動く浮きを考え、その動きを計算しました。深海に水が沈む北大西洋北部 と南極ウェッデル海に置くと、どちらからもいくつかの浮きが実際に北太平 洋の深海に到達しました。その道筋の一例が下図の空色と緑色の線です。大 陸東側の速い流れにのり、海嶺のすきまをぬけたり乗り越えたりしながら、 北太平洋に到達することがわかります。また、下の経路での移動時間は200 年でした(これらはもっとも早く到達するもので、多くの浮きはいろいろな 方向に散らばりながら、全体としてゆっくり移動します)。

海洋観測とともにシミュレーションを行うことで、海洋深層の循環像が 具体的・視覚的に示せます。

南北方向の流速 (cm/s)
流速断面図
北太平洋の北緯30度線に沿う鉛直断面の流速分布。ただし、±2cm/ 秒以上は同じ色(等値線は0cm/秒)。
4000m深水平流速
水深4000mにおける水平流速の分布。赤い矢印が0.5cm/秒以上の流速。北大 西洋北部と南極ウェッデル海で深海に沈み、北太平洋に到達 した浮きの経 路(200年間)をそれぞれ空色と緑色で示す。