海洋研究所・海洋環境センター発足記念式典出展パネル

海洋研究所に新たに発足した海洋環境センターの 記念式典が2001年3月7日に海洋研講堂にて行なわれました. 以下はそのときに展示した当分野のパネルの内容です. (→ パネル縮小版[PNG形式])


西部北太平洋の深層海流を探る

北太平洋の深層を満たす海水は、 グリーンランド沖や南極周辺を起源とし、 南極環海、南太平洋を経て北太平洋に到達した海水です。 北太平洋に入ってきた深層水がどのように循環しているのかを 探るのが海洋大循環分野の大きな研究テーマの一つです。 そのためにさまざまな観測を行なっています。 一つは流速計を係留して深層流を直接計測する方法です (写真1, 図1,2)。 また、水温・塩分・溶存酸素・密度などを計測し (写真2)、 海水の特性を分析するほか、 密度分布から力学的に流れを推定する解析などを行なっています。 これまでの研究から、 サモア水路を抜けて北上した深層水は、 一部はウェーク島水路を抜けてさらに北上し、 また、一部はマリアナ沖まで達すると考えられています。 ウェーク島水路を抜けた深層水は、 さらに中緯度で西進して日本周辺まで到達し、 海盆の縁に沿って北上を続けると思われます (図3右)。 日本のごく近縁の非常に深い海溝上には 独自の循環が形成されています (図3左拡大図)。

係留作業風景 CTD観測風景
写真1 : 白鳳丸甲板での係留作業風景 写真2 : 白鳳丸におけるCTD観測風景
日本海溝深層流速 図1 : 日本海溝の西側4660m深(上)と東側4300m深(下)にて 観測された深層流の時系列 (1996年11月白鳳丸にて設置、1997年9月淡青丸にて回収)
ウェーク島水路深層流速 図2 : ウェーク島水路にて観測された深層流の時系列 (1999年2月白鳳丸にて設置、 2000年2月海洋科学技術センター「みらい」にて回収)
図3 : 西部北太平洋における深層循環の模式図。 図中太い矢印で深層水の流れを示す。 細い矢印は4000m以深に設置された流速計によって観測された平均流速。 赤い矢印は当分野の観測によって得たもので、 青い矢印は他機関(主に米国)の研究者の観測によるもの。 等深線は5000mと4000mを示し、ハッチをかけた部分は4000m以浅を示す。 海溝付近の拡大図には6000mの等深線も示す。 深層循環模式図

海洋大循環分野 [OCG] 東京大学 大気海洋研究所
海洋物理学部門 海洋大循環分野
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